時代劇の「時代」とは?チコちゃんの問いからたどる呼び名の背景
時代劇と聞くと、武士や町人が暮らす昔の社会を思い浮かべます。それでは、時代劇の「時代」はどんな意味なのでしょうか。
NHK『チコちゃんに叱られる!』でも取り上げられたこの問いには、日本映画が新しい表現を求めてきた歩みが関わっています。番組の話題を入口に、今日の言葉の意味と、旧劇から時代劇へと変わっていった背景をたどります。
チコちゃんで取り上げられた「時代」の疑問
2019年11月15日放送の『チコちゃんに叱られる!』では、「時代劇の『時代』とは?」が取り上げられました。当時の放送回の紹介(WEBザテレビジョン)
番組では、時代劇研究家の春日太一さんの説明と、鶴見辰吾さん・山西惇さんが出演した想像を交えた再現ドラマ形式のVTRを通して、映画づくりの変化が紹介されました。当時の番組紹介
そこで示された、新しい時代を切り開くという意味合いは、昔を舞台にした物語にも新しい演出が取り入れられたことに目を向けると捉えやすくなります。場面のつなぎ方(カット割り)や配役の考え方に、映画を作る時代の工夫が表れていました。

今日の「時代劇」はどんな作品を指す?
小学館『デジタル大辞泉』では、時代劇は主に江戸時代やそれ以前を題材にした演劇・映画などとして説明されています。普段、昔の社会を舞台にした映画やドラマを思い浮かべるのは、この意味に沿った捉え方です。「時代劇」の辞書項目(コトバンク)
戦国の武将を描く物語、江戸の捕り物、町人の商いや暮らしを描く物語など、同じ時代劇にもさまざまな入口があります。刀の立ち回りに加え、人間関係や暮らしの場面にも目を向けられるジャンルです。
現在の言葉の意味を押さえたうえで、呼び名が広まった頃の映画づくりを見ると、「新しい表現」という話もつながってきます。
「旧劇」から新しい映画表現へ
日本の初期の劇映画には、歌舞伎の演目などと結び付いた「旧劇」や、現代ものの芝居(新派)と関わる「新派映画」がありました。新派・新劇・新国劇など、演劇のさまざまな流れも映画の発展に関わっています。国立映画アーカイブ「映画 meets 新派・新劇・新国劇」
平凡社『改訂新版 世界大百科事典』の「時代劇映画」では、1923年の『女と海賊』を「新時代劇映画」として送り出した経緯が紹介されています。野村芳亭さんの監督、伊藤大輔さんの脚本による作品です。
その項目では、伊藤大輔さんの回想をもとに、歌舞伎系の俳優を使う従来の作り方から、新劇の俳優や女優などを起用した新しい様式へ進んだことが説明されています。「時代」という語については、歌舞伎の「時代物」「世話物」という区分との関係も述べられています。平凡社の「時代劇映画」項目(コトバンク)
番組は「新しい時代を切り開く」という意味合いを、百科事典は歌舞伎の「時代物」との関係を、それぞれ軸に説明しています。
過去の世界を描きながら、演じ方や映像の見せ方を変えていく。時代劇の呼び名の背景を知ると、舞台となる時代と、映画が作られた時代の両方に関心が向きます。
1899年の『紅葉狩』から見える映画の初期
ここで時代をさかのぼると、初期の映画を知る手がかりの一つに、1899年に撮影された『紅葉狩』があります。九代目市川團十郎さん、五代目尾上菊五郎さんの芸を記録した作品で、国立映画アーカイブは、日本人が撮影したものとして現存する最古の日本映画と紹介しています。国立映画アーカイブの『紅葉狩』紹介
映画の始まりを考えるときは、撮影が行われた時期と、現在までフィルムが残っていることを分けて見ると分かりやすくなります。同館の「映像でみる明治の日本」には、1897~1899年頃に浅野四郎さんが撮影した『日本橋』も紹介されています。『日本橋』の資料紹介
昔の芸や街の姿を記録する映像から、人物を演じ、場面を組み立てる劇映画へ。残されたフィルムや資料をたどることも、時代劇の背景を知る楽しみの一つです。
呼び名を知ると、時代劇の見方が広がる
同じ昔の社会を描いていても、人物の見せ方や場面のテンポは作品によって異なります。呼び名の背景を知ったら、刀を抜く場面だけでなく、会話の間、町の風景、人と人の距離にも目を向けてみてください。
映画史を本でたどりたい方には、岩本憲児さんの『「時代映画」の誕生―講談・小説・剣劇から時代劇へ』(吉川弘文館、2016年)があります。国立国会図書館の書誌には、旧劇から時代映画へ進む過程や、講談・小説・剣劇との関係を扱う目次と要約が掲載されています。国立国会図書館で書誌と目次を見る
時代劇を楽しむ次の入口
作品の表現と歴史上の姿の関係が気になった方には、忍者は本当にあんな動きをした?時代劇と実像の違いがおすすめです。創作を通して育った忍者像と、史料から考えられる姿を整理しています。
演じる人から次の作品を探したい方は、時代劇俳優一覧へ。年代・役柄・代表作から、気になる俳優や作品をたどれます。
『チコちゃんに叱られる!』の問いをきっかけに呼び名の背景へ進むと、時代劇は描かれた社会と映画表現の両方から楽しめます。気になった人物や場面から、次の一作に出会ってみてください。

