【歴史人物怪異談事典】朝里樹さんが集めた、武将と文人の不思議な話
天下を争う武将のもとに、不思議なものが現れたら。旅する俳人が、怪談の主人公になったら。時代劇や歴史小説で知った人物にも、戦や政治の功績とは違う姿で語られる物語があります。
朝里樹さんの『歴史人物怪異談事典』は、歴史人物にまつわる怪異談を集めた一冊です。人物の来歴と不思議な話を読み比べながら、後世に伝わる人物像を楽しめます。

『歴史人物怪異談事典』はどんな本?
神や幽霊、妖怪などと人が関わる話が、本書の題材です。幻冬舎の刊行案内によると、紀元前から昭和時代までの500人以上を取り上げ、人物のプロフィールと怪異談を組み合わせて紹介しています。
著者の朝里樹さんは、怪異・妖怪を研究し、さまざまな怪異談の収集を行ってきた研究家です。『日本現代怪異事典』などの著書もあります。本書では歴史人物を手がかりに、怪異の世界をたどれます。
最初から通して読むほか、好きな人物の項目を探して読む方法もあります。長い物語を一度に読む本とは違い、気になる人物から開ける事典という形も特徴です。
武将や文人は、怪異談でどう描かれる?
出版社の試し読みには、よく知られた人物の意外なエピソードが公開されています。ここで紹介するのは、本書で扱われる伝承や物語の例です。怪異が実際に起きたと確かめられた出来事として読むものではありません。
織田信長と、声を上げたと伝わる大蘇鉄
妙国寺から安土城へ移された大蘇鉄が、夜ごと元の寺へ帰りたいと声を上げる。信長は最後には寺へ返した――という話が、信長と秀吉を取り上げた試し読みに登場します。
戦場での強さとは別に、不思議な木を前にした姿が語られます。同じ人物でも、怪異談ではどんな役回りを与えられるのか。その違いに注目できます。
徳川家康と、庭に現れたとされる「肉人」
家康と芭蕉を取り上げた試し読みでは、『一宵話』に載る、駿府城の庭へ奇妙な肉の塊のようなものが現れたという話を紹介しています。家康が捨てさせた判断にも、『一宵話』の中で説明が加えられていると、出版社の記事は紹介しています。
不思議な生き物の姿だけでなく、それにどう向き合う人物として語られているのかにも注目できます。
松尾芭蕉を主人公にした怪談
同じ試し読みには、芭蕉一行が怪異に出会う『芭蕉翁行脚怪談袋』が登場します。出版社の記事では、江戸時代後期に芭蕉を主人公として創作された説話の一つと紹介されています。
旅をしたという人物のイメージから、さらに物語が生まれる。歴史人物についての知識と、その人物を主人公にした創作を分けて読むと、怪談の楽しみ方も広がります。
史実と伝承を分けると、人物像が見えてくる
実在の人物の名前が出てくるからといって、話の中の出来事まですべて史実になるわけではありません。人物の生涯、後世に語られた伝承、作家による物語では、確かめ方が異なります。
読むときは、次の点を意識してみてください。
- 人物のプロフィールと、怪異談の部分を分けて読む。
- どの本や伝承をもとに紹介されている話か、出典に目を向ける。
- ドラマや小説で見た場面と似ていても、同じ出典・同じ内容かどうかは別に考える。
本書には参考資料一覧もあります。人物について調べる入口として使う場合も、気になる話の出典をたどる姿勢が役立ちます。ここで挙げた読み方は、本を楽しむための提案です。
人名だけではない、5種類の索引から探す
人物名を覚えていなくても、探したい話の手がかりから開けます。本書の索引を、読みたいこと別にまとめました。
| 索引 | こんなときに使える |
|---|---|
| 五十音順索引 | 名前がわかっている人物の話を探したい |
| 能力索引 | 怪力や妖術など、話の中の力から探したい |
| 関連性索引 | 人と怪異が戦う、祟られるなど、関わり方から探したい |
| 関連怪異索引 | 怪異の名前から、関わる人物を探したい |
| 地域索引 | 地名を手がかりに、その土地に関係する人物や話を探したい |
たとえば人物名から読んだあと、関連する怪異や土地へ関心を広げることもできます。創作の着想を探すときも、索引は題材を見つける手がかりになります。ただし、伝承の紹介と、現代の小説やゲームの設定そのものとは区別しましょう。
書籍情報と、紙・Kindle版の選び方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 歴史人物怪異談事典 |
| 著者 | 朝里樹(あさざと・いつき) |
| 出版社 | 幻冬舎 |
| 紙版の発売日 | 2019年10月30日 |
| 紙版の判型 | A5判・並製 |
紙版の発売日・判型は、出版社の刊行案内に基づきます。国立国会図書館の書誌でも、同書の出版年月と参考文献・索引の存在を確認できます。
紙の本でページを行き来したい方には紙版、電子で持ち歩きたい方にはKindle版が候補です。購入時は商品ページで媒体を選び、電子版は対応端末や試し読みも確認すると、自分の読み方に合うか判断しやすくなります。
紙の本で読む
『歴史人物怪異談事典』の紙版です。販売価格や取り扱いは、各書店の商品ページで確認できます。
Kindle版で読む
以下は同書のKindle版です。紙の本の発送ではなく、電子書籍の商品です。
怪異を題材にした物語も楽しむ
歴史人物と怪異の組み合わせに興味を持ったら、映像作品にも目を向けてみてください。当サイトの佐々木蔵之介さん主演のドラマ『陰陽師』の記事では、夢枕獏さんの小説『陰陽師』の「瀧夜叉姫」を映像化した作品を紹介しています。
こちらは小説をもとにしたドラマで、『歴史人物怪異談事典』の映像化ではありません。事典に集められた話と、映像作品で描かれる人物像を、それぞれの物語として楽しめます。
まとめ|知っている人物から、不思議な物語の世界へ
『歴史人物怪異談事典』は、歴史人物の来歴と、その人物をめぐって語られてきた怪異談に触れられる一冊です。史実と伝承・創作を分けながら読むことで、人物がどんな姿で語り継がれてきたかにも目を向けられます。
まずは気になる人物の名前から。さらに怪異や土地の索引へと進めば、時代劇で知った人々の、別の物語が見つかるかもしれません。

