⬛ 訃報:福本清三さんが2021年1月1日、肺がんのため京都市の自宅にて逝去されました。享年77歳。葬儀は故人の遺志により家族葬にて執り行われました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
「どこかで誰かが見ていてくれる」——それが、斬られ続けた男の信念だった。
名前も顔も知らない。それでも、あの時代劇に必ずいた。日本一の「斬られ役」俳優・福本清三さんは、59年間にわたって作品に出演し、累計5万回以上斬られ続けた。ハリウッド映画「ラストサムライ」にも出演し、71歳にしてついかつ映画初主演を飾った、真の「縁の下の力持ち」の物語です。
プロフィール
| 本名 | 橋本清三(はしもと せいぞう) |
|---|---|
| 生年月日 | 1943年(昭和18年)2月3日 |
| 逝去 | 2021年(令和3年)1月1日(享年77歳・肺がん) |
| 出身地 | 兵庫県城崎郡香住町(現・美方郡香美町香住区) |
| 所属 | 東映(1959年入社〜定年後も嘱託として在籍) |
| 主な異名 | 「5万回斬られた男」「日本一の斬られ役」 |
| 主な受賞 | 第27回日本アカデミー賞 協会特別賞(2004年) |
俳優としての歩み
1943年
兵庫県・香住町に生まれる。
1959年
中学卒業後、親類の米穀店後継ぎとなる予定だったが、16歳で東映京都撮影所に入社。「剣戟の都」と呼ばれた太秦で、時代劇の世界に飛び込む。
20代後半
「斬られ役」専門の俳優として頭角を現す。東映京都が制作するほぼ全ての時代劇に「大部屋俳優」として出演。名もなき悪役・雑兵として、日本の時代劇を支え続けた。
1978年
フジテレビ「柳生一族の陰謀」に出演。東映以外の作品へも活動の場を広げていく。
2002年
ハリウッド映画「ラストサムライ」(トム・クルーズ主演)に出演。何度話しかけられても一切答えない「寡黙なサムライ」として存在感を放ち、世界的な注目を集めた。
2003年
東映を定年退職。しかし「嘱託」という形で東映に籍を置き、俳優業を継続。
2004年
第27回日本アカデミー賞 協会特別賞を受賞。「斬られ役」としての長年の貢献が評価された。
2014年
映画「太秦ライムライト」(英題: Uzumasa Limelight)にて、71歳にして映画初主演。「斬られ役一筋のベテラン俳優」という自身とほぼ重なる役を演じ、カナダ・トロント国際映画祭など世界各地で上映される国際的な話題作となった。
2019年
映画「BLACKFOX: Age of the Ninja」に出演。晩年まで精力的に活動を続けた。
2020年
NHKスペシャル時代劇「十三人の刺客」に出演。これが最後の出演作となった。
2021年
1月1日、肺がんのため京都市の自宅にて逝去。享年77歳。
名エピソード——「斬られ役」の矜持
📖 「どこかで誰かが見ていてくれる」という信念
福本さんが最も大切にしていた言葉は「どこかで誰かが見ていてくれる」というもの。名前も顔も知られない大部屋俳優として、画面の端で一瞬だけ斬られる役を何十年も続けることは、並大抵の精神力では続けられない。それでも、見えないどこかにいる一人の視聴者のために、最後の一人まで手を抜かない——この信念が、5万回という数字を生み出した。
🎬 ラストサムライで「寡黙な侍」を演じ世界へ
ハリウッドの現場でも、福本さんのスタイルは変わらなかった。「ラストサムライ」では、何度話しかけられても一言も言葉を発しない「寡黙なサムライ」を演じた。言葉で表現しない演技——それは長年の斬られ役の中で磨かれた「存在感で語る」技術の発露だった。
🌟 71歳、初主演映画「太秦ライムライト」
2014年、71歳にして映画「太秦ライムライト」で初主演を果たした福本さん。斬られ役専門のベテラン俳優が、時代の変化とともに居場所を失っていく姿を描いたこの作品は、映画祭での上映が相次ぎ国際的な評価を得た。「自分の人生そのもの」とも評されたこの役を、福本さんは全身で演じ切った。
主な出演作品
時代劇テレビシリーズ(代表作)
| 作品名 | 放送局・年代 | 主な役どころ |
|---|---|---|
| 水戸黄門 | TBS・1969年〜 | 斬られる悪役・雑兵として全シリーズにわたり出演。 |
| 銭形平次 | フジテレビ | 捕り物シーンで倒される悪漢として定番出演。 |
| 遠山の金さん | テレビ朝日 | 金さんに成敗される悪役として多数出演。 |
| 大岡越前 | TBS | 裁きを受ける側として長年登場。 |
| 柳生一族の陰謀 | フジテレビ・1978年 | 激しい剣戟シーンに出演。東映以外への進出のきっかけ。 |
| 暴れん坊将軍 | テレビ朝日 | 将軍に斬られる悪役として複数シリーズに出演。 |
| 必殺シリーズ | テレビ朝日 | 仕置き対象の悪役・通行人など幅広く出演。 |
| 三匹が斬る! | テレビ朝日 | コメディタッチの悪役として登場。 |
| 功名が辻 | NHK大河・2006年 | 斬られ役として大河ドラマにも出演。 |
映画作品
| 作品名 | 公開年 | 備考 |
|---|---|---|
| 伊賀忍法帖 | 1982年 | 東映時代劇映画の忍者役として出演。 |
| ラストサムライ | 2003年 | トム・クルーズ主演のハリウッド映画。寡黙なサムライを演じる。 |
| 太秦ライムライト | 2014年 | 映画初主演。斬られ役一筋のベテラン俳優を演じる半自伝的作品。カナダ・トロント国際映画祭ほか多数の映画祭で上映。 |
| BLACKFOX: Age of the Ninja | 2019年 | 時代劇専門チャンネル×東映の特撮アクション時代劇。晩年の貴重な出演作。 |
著書・受賞歴
- 第27回日本アカデミー賞 協会特別賞受賞(2004年)——斬られ役として時代劇を支え続けた長年の功績が評価された。
- 著書「どこかで誰かが見ていてくれる~日本一の斬られ役・福本清三~」(2001年・主婦と生活社) ISBN: 978-4-391-12660-9——自身の半生を綴った自伝的著作。
- 道徳副読本「五万回斬られた男」収録(2012年)——中学3年生を対象とした道徳の副読本に、自身の生き方を綴ったエッセイが収録された。「努力し続けることの大切さ」を伝える教材として採用。
後世への影響——「斬られ役」という生き方
福本清三さんが残したものは、5万回という記録だけではありません。「目立たなくていい、名前を覚えてもらえなくていい、それでも誰かが見ていてくれる」という仕事への姿勢は、道徳の教科書に収録されるほど多くの人の心に響きました。
時代劇が全盛期を過ぎた後も、「太秦ライムライト」という映画を通じて「斬られ役という職人の世界」を後世に記録として残したことも、大きな功績の一つです。日本映画・時代劇の裏方を支えた無数の「大部屋俳優」たちへの敬意と、その世界を初めて主役として描いたこの映画は、今後も語り継がれていくでしょう。
福本さんが斬られ続けた60年間は、日本の時代劇そのものの歴史でした。
※ 本記事は各種報道・著書等をもとに作成しています。
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